お客様事例
お客様事例
2008年11月4日公開
3次元設計のその先へ。
製造メーカーの理想を現実に変えていきます。
プラスチックの総合メーカー
上流工程でQCDをコントロール
タカギセイコーは1949年に紡績機器部品の樹脂化に初めて成功して以来、
カメラなどの精密部品から、自動車ボディといった大型かつ複雑なプラスチック成形品まで扱い、
現在では4輪・2輪の車両樹脂製品を筆頭にOA機器、通信機器を事業の柱としています。
タカギセイコーのモノづくりは、上流工程に高いウエイトを置いています。
製品設計から金型製作、成形、加工、塗装、組立までの全工程をオンライン化した「TS生産一貫システム」を構築。
システムのベースはコンカレントエンジニアリングによる製品開発力です。
タカギセイコーでは「デザイン・イン」体制で、エンジニアたちをユーザーに派遣し、製品企画の段階からユーザーと共にモノづくりを進めています。
さらに「樹脂化設計」で、タカギセイコーで蓄積してきた樹脂特有の特性等を3次元データへ盛り込み、ユーザーが希望する状態でデータ提供しています。
新湊金型工場を統括する工場長の織田氏は自信を持って語ります。
「当社のエンジニアたちは樹脂・金型作り・成形とトータルの技術力を持っている。
ユーザー様が2次元の図面で表現していることをタカギセイコーでは独自のノウハウを付加して3次元で作ります。
ユーザー様からワイヤーフレームだけいただければ、タカギセイコーで製品にまで完成させることができます。
単なる型屋ではありません」。
蓄積してきた豊富な技術ノウハウをCADに登録することができるから
タカギセイコーでは樹脂金型の完全3次元設計を目的として、2000年に日本ユニシス・エクセリューションズ(以下UEL)のCADCEUSを1台導入。
その後UELからCADmeisterが2005年にリリースされ、現在はCADmeister7台を使用しています。
3次元CADソフトウエア選定の責任者であった高辻氏は、数あるソフトウエアの中からCADCEUSを選択した理由を次のように語ります。
「まず操作性が良かったですね。
そして一番の理由は、これまで何十年にも渡って蓄積してきた技術ノウハウのデータベース化およびカスタマイズでCADに登録できること。
とにかくノウハウが豊富にあるので、それをシステムで活かしたかった。
他のシステムと比較したときに、
操作性、カスタマイズ性の良さはCADCEUSが抜群に良かったですね。」
また、ソリッドとサーフェスをシームレスに使える点も柔軟な設計を可能にしているといいます。
「型構造部はソリッドですが、現在でも製品部はサーフェスのまま設計しています。
特に3次元設計開始当時はデータ修正ソフト等もほとんどありませんので、ソリッドにはこだわらずにいこうと早い段階で割り切りました。」
ほかの理由としては「大手カーメーカーがUELのCADを使用している影響もありましたね。
プロ好みのCADというところでしょうか。」
パラメトリックに苦労、柔軟な手法で打開
2輪車・4輪車の部品は形状の違いがそれほどないため、
タカギセイコーではパラメトリックを駆使し流用設計により工数削減に成功しています。
金型は複数のパーツからできています。
さまざまなタイプのパーツをとにかく数多く作成しデータベースに登録。
データベースから最適なタイプのパーツを呼び出し、プラモデルのように組み立てて金型を作成しているそうです。
この設計手法を確立するまでには苦労も多かったようです。
工機課でメイン担当として3次元設計化を進めてきた福田氏は、パラメトリック活用ノウハウを次のように語ります。
「パラメトリックの扱いは、正直慣れるまで時間が掛かりました。
3次元設計開始直後は工数が倍ほど増えてしまい、どうすればパラメトリックを活かした設計ができるか分からず苦労しました。
試行錯誤しながらやっと見つけた解決策は『パラメトリックにはこだわらない』ということです。
ある程度のところまではパラメトリックで作成し、途中で非パラ化することにしました。
そうすると余計なエラーを出さずにパラメトリックを活かした設計手法で型を作成できるようになりました。」
この手法は、パーツ作成時も、パーツを組み立て金型全体を作成する時も利用しているとのこと。
3次元設計を始めて半年後くらいから工数が減り始め、1年後には約半減したそうです。
また半年後というタイミングは、パーツのデータベースが現在の半分くらい構築されてきた頃にあたります。
「パーツの作成にも苦労しました。
何度も何度も作り直しています。
始めはとりあえず形状があれば良いという考えで作成していましたが、
パーツを組み立てていくと配置しづらい部分がでてきたため、配置原点の位置等を考慮して使いやすいように作らなければならないと後から気づきました。」
3次元設計開始直後を振り返り福田氏はいいます。
「工数が倍増したときは、本当につらかったですが3次元化したいという思いに加え、会社のトップから『何が何でも3次元でやりなさい』という指示があり、
そういう意味では環境が良かったと思います。
今工数削減できているのは、とにかく一度決めたことをブレずに進めてきた結果です」。
バージョンアップ作業の簡素化とUELからのもっと多くの提案を期待します。
CADmeisterは自社オリジナルにカスタマイズできるところが本当に良いが、バージョンアップ方法が複雑なのが難点だという福田氏。
「どのファイルが上書きされバックアップとらなければいけないのかを把握するのが大変です。
ボタン一つクリックするだけでバージョンアップできるようにして欲しいですね。」
またタカギセイコーに合った提案をもっとたくさんしてほしいそうです。
「もっとシステム自体をアピールしてほしいですね。
また、技術的な話をするときに現在は名古屋からUELのSEに来ていただいていますが、遠いので気軽に相談することができない状況です。
もっと近くにいれば何でも気軽に情報交換できると思うので、富山にもUELのSEがいてくれると助かります」。
ソリッドモデルをいかに有効活用するか
型づくりにとどまらず製造メーカーとしてトータルで原価管理したい
2008年7月にCAM-ATTRIBUTEを導入したタカギセイコーでは、
当面の目標は下流工程との連携をうまくおこなうこと。
現在は穴座標出力するための準備中です。
「まずは穴加工属性、そして2次元ポケット加工、いずれはNCデータ出力までつなげたいですね。」
そして今後の課題としてソリッド化、軽量化をあげます。
「いかにものを薄く、コンパクト、シンプルにするかが今後の課題です。
削減できる箇所を解析するために、まずは製品部でも金型でも3次元データはすべてサーフェスではなくソリッド化していきます。
次に、例えば射出圧によってどれくらい板厚が必要か、型として保証できるサイズは最低限いくつか、どの部分は削減してもよいか、
といったノウハウはまだ勘と経験に頼っているのが現状。
このノウハウを数値化してデータベースに登録し、型の軽量化につなげたいと考えています。」
解析で計算しつつ横でその結果を見ながら設計するのが理想、とのことです。
さらに織田工場長は、型づくりのみならず製造メーカーとして広い視野でのビジョンを語ります。
「いずれは、作るところからお客様へ届くまでのトータルコストを掌握しながらものづくりをおこないたい。
例えば物の搬入や梱包、輸送費などもデータベースに登録し、そういったコスト情報もソリッドモデルに属性として持たせる。
すべてのデータをソリッド化し、ソリッドデータには形状ノウハウだけでなく物流関連の知識ノウハウも持たせたいのです。
ソリッドは無限の活用法を秘めている。
『完成されたソリッドモデルがあれば原価管理も可能な体制』 が目指すところです」。
北陸ES営業の中鍛冶です。
タカギセイコー様とのお付き合いも長くなりましたが、
常に前向きに技術を取り入れるなど気概にあふれる社風を感じており、楽しく仕事をさせていただいています。
これからも新たなご提案をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
写真のとおり最近は中低山の登山にはまっています。
北陸には立山・白山と高い山がありますが、市街地からすぐのところにある中低山も静かでいいですよ。
これからあまり外出しなくなる冬を前に、紅葉を見ながら足腰を鍛えています。
東海北陸自動車道も全通し、来やすくなりました。ぜひ北陸を満喫しにお越しください。
3次元データ活用方法のみならず多くの新技術開発に挑戦・実施されていて、当原稿内ではお伝えしきれないほどです。
独自で研究開発されている技術が多いですが、今後はさらに弊社SEのサポートをさせていただきたいと感じました。
私が訪問した日は、富山の伝統的なお祭り「おわら風の盆」の翌日でした。
次に富山を訪れるときは、胡弓や三味線の音色、雅な踊りとお囃子、闇夜に浮かぶ灯りで幻想的な夜を過ごしたいです。
特急はくたかの車窓から
取材担当 牧野